空飛ぶ広報室 第1回★戦闘機というのは人殺しのための機械ですよね
- 2013.04.15 Monday
- 12:00
- 他の民放テレビ・ドラマ・芸能
3月末に、東日本大震災で大きな被害を受けた空自・松島基地に「ブルーインパルス」が帰還したところなので、誠に時宜を得た放映であります。
『初回拡大』というのは、間延びしたり冗長になったりするケースが少なくありませんが、『空飛ぶ広報室 第1回』に関しては起承転結がクッキリしていて余計な長さを感じませんでした。
綾野剛、新垣結衣、柴田恭兵のキャラが立っていて、これがドラマのメリハリにも繋がっていました。
−◆−
勝ち気で不寛容な性格が原因でトラブってしまい、報道局から情報部に”左遷”されたディレクター・稲葉リカ (新垣結衣)が『制服萌えシリーズ』の担当となり、しぶしぶ自衛隊を取材しはじめます。
気位が高いリカ(新垣結衣)は、つまらない仕事だと思って不本意でツンケンしっぱなし。
松島基地の空幕広報室に赴き、室長の鷺坂一佐(柴田恭兵)と空井二尉(綾野剛)とコンタクトしはじめたリカ(新垣結衣)は、航空自衛隊のことを空軍と呼んだり、鷺坂一佐の言葉尻を捉えて噛みついたり、取材にたいして装備を無償で宣材に供することを「利益供与」だと決めつけたり・・・。
報道に復帰したくてスクープが欲しいリカ(新垣結衣)は事件性があって絵になるネタが欲しいと空井二尉(綾野剛)に申し出ます。
空井は「領空侵犯や災害出動ということになりますけど、そういうことが起きることを期待してるってことですか? テレビの方って物騒ですね。」と静かな口調で返します。
メディアにとっては真理を突かれて耳の痛いセリフかな・・。
で、空井は戦闘機と戦闘機乗りについて熱く語りながら、航空学生がパイロットになるまでを扱う企画を持ちかけます。
ところがリカは「お断りします。せっかくのご提案なんですけど、企画としてはちょっと・・・。だって、戦闘機というのは人殺しのための機械ですよね。そんなものに乗りたいなんて、そんな願望がある人を取り上げるのはちょっと・・・。」
みるみるうちに表情が変わった空井二尉(綾野剛)が「人を殺したいと思ったことなんか一度もありません!!」と声を張り上げました。
机を叩いて怒声を上げる空井二尉を同僚達が羽交い締めにして制止する騒ぎに・・・。
番組序盤は、”純(夏菜)”の独善的な性格と”田嶋陽子”の教条主義な言動を併せ持った感じのリカ(新垣結衣)が鬱陶しくて堪りません。
せっかく『純と愛』が終わって純(夏菜)とオサラバできたのに、またまたイライラ・キャラ登場かぁ!?
−◆−
リカ(新垣結衣)の性格や思考形態に辟易としてドラマに嫌気がさしかけたのですが、番組中盤は一般企業の営業マン並みの交渉術を持つ鷺坂一佐(柴田恭兵)の柔軟で懐が深い言動で救われました。(空井も救われてるけど、観てる小生も救われた。)
一見すると軽いノリで青臭いリカ (新垣結衣)を上手くあしらう鷺坂一佐が、一方では取材やドラマ撮影協力のための内部決裁をとるために巧みな根回しを行い、見事に”偉いさん”を得心させる姿は、宮仕えをしていた人間として感情移入したりある種の尊敬の念も湧いて来ちゃう。
部下の扱いも上手いし、軟派に見えるけど考え抜かれた行動には一本筋が通ってる。
不謹慎な比喩になるかもしれないけど、体罰で人をどうにかしようとするタイプとは真反対で、頭脳を駆使して実際に物事を動かす人物。
綾野剛はまだセリフも少なくて、まるで柴田恭兵が主役かと思えるほどの中盤でした。
還暦を過ぎた柴田恭兵は、昔からの個性に柔らかみも加わって、とっても良い塩梅でした。
あと、出番は多いわけではありませんが、鷺坂らをフォローする広報室広報班・比嘉一曹(ムロツヨシ)のマイルドな雰囲気も塩梅が良い。
さすがメレブであります。(『勇者ヨシヒコ』ファン目線!)
−◆−
前半は影が薄いとされていた空井二尉(綾野剛)でしたが、後半は綾野剛の独断場。
(影は薄かったけど、”制服萌え”ではありました。)
せっかく子供のころからの夢だった戦闘機パイロットになって、ブルーインパルスを飛ばすべく松島配属になりながら、大型トラックによる不慮の事故で足などに大怪我を負い、肉体の限界を要求されるパイロットを罷免された過去が明らかになります。
綾野剛の切れ長な目が空井二尉の悲運を滲ませていて、それだけで見入っちゃうわ。
で、空自のヘリコプターCH-47を使ってのドラマ撮影の当日、帝都テレビ局のドラマクルーのミスでエキストラが被るヘルメットが現場に届いていなくて、撮影を翌日回しにすると現場スタッフ(小松利昌)が我が儘を言い出すのですが、それまでは自衛隊に好意的とは言えなかったリカ(新垣結衣)が怒りをあらわに「明日にしろとか何ぬかしてんですか。この人達は今日のために遅くまで書類作ったり手続きしたり方々に頭下げたり準備してくれたんです。」「こうなったのは誰のせいなのよ、自分たちの責任でしょ!!」云々と猛抗議。
戦闘機は人殺しのの機械だと言っていたリカ(新垣結衣)が、空井二尉を密着取材しているうちに心に化学変化が起きた様子。
いわゆる『振れ幅』ってヤツですね。
直後、空井二尉(綾野剛)は倉庫にヘルメットがあったことを思い出し、全力疾走でヘルメットを取りに行きますが、交通事故で傷めた膝がパンク。
それでも必死でヘルメットが入った段ボール箱を撮影現場まで運び、撮影は無事に始まりました。
−◆−
撮影終了後、幼い男の子が空井二尉(綾野剛)のそばにやって来て、どうすればパイロットになれるのかと質問しちゃいます。
しゃがんで子供に目線を合わせた空井二尉は「一生懸命勉強して、運動もして、目が悪くならないように気をつける。そしたらきっとパイロットになれる。」
すでに空井二尉の目が潤み始めてるように見えます。
何も知らない無邪気な子供が「ブルーインパルス乗れるかなぁ? 航空祭で観たんだ、超カッケーの。」と追加質問。
「カッケー」って言い方は、アキ(能年玲奈)と同じやね。
絶句した空井二尉は、自分が子供の頃に父親に肩車されて観たブルーインパルスの展示飛行を思い出しています。
画面が、天翔るブルーインパルスから綾野剛に切り替わったときには、空井二尉の目から涙があふれていました。
空井二尉は子供の目をジッと見つめ「ブルーインパルス、きっと乗れるよ。信じ続けて頑張れば必ず夢は叶う。」
ブルーインパルスに乗れなくなった空井二尉(綾野剛)に、ブルーインパルス乗りになりたい子供が質問するという出来すぎた場面なんですが、綾野剛の目の演技だけで理屈は吹っ飛んで感情が反応しちゃいました。
ベタな流れなのに、ウルウル来ちゃった・・・・。
綾野剛、恐るべし!!
−◆−
子供が去った後、背中を向けて涙を流す空井二尉(綾野剛)に「今での夢の中で飛んでるんですね。」とリカ(新垣結衣)。
まだ密着取材が続いて撮影されてると思い込んでる空井二尉はリカに背を向けたまま「こんなとこ撮って楽しいですか。いい年した男が、みっともなく、こんな!」と声を絞り出します。
リカ「カメラはもう仕舞いました。仕舞いましたから。」
ハイエナ的なマスコミ人ではなく、人として空井二尉に向き合ってるリカ(新垣結衣)です。
振りかえった空井二尉(綾野剛)は、こらえきれずに嗚咽。
「なんで俺なんだよ! 他にも居るだろ、この足で充分なヤツが居るだろ! 俺はブルーに乗れたんだ。乗るはずだった乗れたのに! 目が覚めると空じゃないんだ。真っ暗な天井しかない。もう二度と飛べない。二度と空を飛べないんだ俺は・・」と、自分の運命を恨んで号泣。
リカ(新垣結衣)は掛ける言葉もありません。
空井二尉は嗚咽しながら膝から崩れ落ちるように地面に突っ伏して「チクショー、チクショー、チクショー、チクショー、チクショー」
地面を叩いて号泣しつづけている空井二尉のそばに行ったリカが、彼の後頭部に手をやって子供にするように撫で撫で・・・・。
普段は理屈で動くリカ(新垣結衣)が、この時は無意識に身体が動いた様子・・・。
ハッと我に返ったリカが「ごめんなさい。」
顔を上げた空井二尉は、何も言わずに首を振り、再び頭を落として顔を地面に向けます。
まるで撫で続けて欲しいと言ってるみたいに・・・。
リカは黙って空井二尉の後頭部を撫でてあげます・・・。
ここもかなりベタな場面なのに、綾野剛の熱演にほだされちゃった・・・。
このドラマが始まる15分ほど前まで『八重の桜』で松平容保(綾野剛)をパーフェクトに演じ、『空飛ぶ広報室』でもこの演技!!!
綾野剛がブレークしないはずがないわ。
(綾野剛を使ってたのに打ち切りになった『クレオパトラな女たち』って、逆に凄いな。)
−◆−
後日、帝都テレビにいるリカ(新垣結衣)に空井二尉から電話が入ります。
空井「あのぉ、あの、自分、稲葉さんのために生きてみようと思います。」
一瞬リカは告られたと思ったのか、どぎまぎしちゃって「あ、あなたには国を守るという使命があるでしょ。」
空井「まずは稲葉さんに分かっていただくことが広報の仕事なんだと思うんです。稲葉さんのための広報官になるところからはじめようと思います。だって稲葉さん、基地と駐屯地の違いさえ分かってないですよね・・・」
リカは、告白でないことを承知してすこし残念そう?
とにかく、思いっきり泣いて憑き物が落ちたような空井二尉(綾野剛)。
彼の気持ちがようやく前に向いて、なんか心地良いラストになりました。
序盤、中盤、後半で『序破急』が利いた造りになっていて、徐々にドラマ世界に引っぱられた感じ・・・。
−◆−
綾野剛はもとより、柴田恭兵のもとにムロツヨシや水野美紀や要潤らが顔を並べてる広報室も何となく良い感じですし、演技力について不安のある新垣結衣も無難に役をこなしていて、もしかすると当たり役かもしれないし・・・。
初回を見終えた時点では、充分な出来映えでした。
ちなみに、有川浩の「自衛隊シリーズ」が好きなのでドラマ化が決まる前から原作を読みたいと思っては居たのですが、もっぱら図書館利用の小生は「貸し出し予約145人待ち」の『空飛ぶ広報室』をいつになったら読めるのか見当もつきません。
松島基地にF-4ファントムとおぼしき戦闘機が駐機していたけど、ベトナム戦争が初の実戦だった機種なのに今でも現役やねんねぇ・・・。
「こんなに古いの使ってます」というアピールで大写しになったのかなぁ・・・。
◇◆◇ 連ドラなど感想 ◇◆◇
★ガリレオ2:第11話(終)「聖女の救済(後)」>>
★仮面ライダーウィザード第40話感想 >>
★ガリレオXX 内海薫最後の事件 感想>>
★ラスト・シンデレラ 第11話(終) 感想>>
★「家族ゲーム」第10話(終) 感想>>
★ガリレオ2:第11話(終)「聖女の救済(後)」>>
★仮面ライダーウィザード第40話感想 >>
★ガリレオXX 内海薫最後の事件 感想>>
★ラスト・シンデレラ 第11話(終) 感想>>
★「家族ゲーム」第10話(終) 感想>>
◇◆◇ 「あまちゃん」感想 ◇◆◇
#73-74(6/24-25) #70-72(6/20-22) #68-69(6/19)
#66(6/15) #65(6/14) #64(6/13) #63(6/12)
#73-74(6/24-25) #70-72(6/20-22) #68-69(6/19)
#66(6/15) #65(6/14) #64(6/13) #63(6/12)
◇◆◇ 大河ドラマ『八重の桜』感想 ◇◆◇
第25回「白虎隊出陣」 第24回「二本松少年隊の悲劇」
第23回「会津を救え」 第22回「弟のかたき」 第21回「敗戦の責任」
第20回「開戦 鳥羽伏見」 第19回「慶喜の誤算」 第18回 「尚之助との旅」
第25回「白虎隊出陣」 第24回「二本松少年隊の悲劇」
第23回「会津を救え」 第22回「弟のかたき」 第21回「敗戦の責任」
第20回「開戦 鳥羽伏見」 第19回「慶喜の誤算」 第18回 「尚之助との旅」
JUGEMテーマ:日本のTVドラマ
- 他の民放テレビ・ドラマ・芸能
- trackbacks(18)
- -
- -
- -