「高校入試」最終回〜サクラチル 悪意の塊である言葉は心を破壊する恐ろしい力を

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    土ドラ『高校入試』第13話(最終回)

    とても良心的な作品でした。
    −◆−

    事件を語り始めた春山杏子(長澤まさみ)。
    「問題提起をすれば帰国子女だとあしらわれる。小さな問題は無かったことにされる。余程大きな事件が起きないと学校は真剣に動かない。正体を現さない。」

    このセリフは『福島第一原発事故』にもあてはまりますね。
    新潟県中越沖地震での柏崎刈羽原子力発電所の被害程度では真剣に動かず、福島第一原発事故が起きて、それから2年近くたった今、大飯原発などで断層調査してるんだもの・・・。
    −◆−

    杏子(長澤まさみ)が職員に田辺光一(中村倫也)のウエブサイトを見せます。
    そこには、彼が作った『あなたにとって高校入試とは』という題名のドキュメンタリー番組が・・・。

    光一が番組内で経緯を説明しています。
    それによると、得点の開示請求をしたところ自己採点では86点だった英語が0点だったことが判明。
    続けて答案用紙の開示請求をしたら、受験番号未記入だった・・・。

    光一は「でも、これは0点にされるようなことなのだろうか?
    ボクは自分の運の無さを嘆いた。そして、やはり学校側に不信感を抱いた。別の試験会場ではテスト終了5分前に試験監督が受験番号の確認をするようにと声をかけていたのだ。また別の受験界上では答案を回収した際、試験監督が全部の受験番号が記入されているかを確認し、もし抜けていた場合、当該受験生にその場で書かせていたという。もし僕がそれらの試験監督に当たっていたら・・・そうやって数日間、運の無さを呪ったがどうにかなるわけでもないし、立ち止まっているわけにもいかない。
    僕のような受験生が出ないようにするためにも、この経験を多くの人に知ってもらうべきだと思った。
    これから受験をする人は必ず最初に受験番号書いてほしい。そして、学校側は試験監督ごとに対処法が異なるといった不公平なことがないよう、試験において生じる問題点についてみんなで話し合い、解決策を統一してもらいたい。学校側にとっては1年に1度の行事と同じようなものかもしれないが、受験生は人生を賭けて挑んでいるのだから。」


    うわ・・・なんか引っかかる〜〜。
    小生は、のせいじゃないと思うわ。
    受験番号や氏名の記入は、受験の基礎基本いろはの「い」だもの・・・。

    自らまいた種なのに「運」や「学校の対処」を主因にしたのは、自分が負うべき責任をキチンと受け止めるという躾や教育を受けることなく、人や時代や社会のせいにする風潮にどっぷり浸かっちゃってるからだろうなぁ・・・人のせいにする方が楽だもの。

    自省も含めてそう思う・・・。
    −◆−

    受験生・田辺淳一(柾木玲弥)と光一(中村倫也)の兄弟も自宅で同じサイトを覗いていました。

    淳一「兄さんは正面から戦いに挑んだんだね。」
    光一「そして返り血を浴びた。」

    場面は校長室に戻り、杏子(長澤まさみ)が説明を続けています。

    ドキュメンタリー番組『あなたにとって高校入試とは』が載っている光一のサイトには、当初は「がんばれ」「元気出してください」などポジティブな書き込みが続いていたが、やがて「バカじゃねぇの」「自分が受験番号を書き忘れたくせに学校のせいにして酷いドキュメンタリー番組まで作ってなにがしかいのかさっぱりわからん。」「運の悪さを他人のせいにしているだけ。こういうヤツは一生そうやって生きていくんだろうけど。」など、ネガティブな書き込みが溢れ始めたのです。

    気持ちは分かるけど、書き込む言葉の選び方に容赦が無い。

    杏子「勇気をもって踏み出した行動は。心無い言葉たちに潰されてしまったのです。」

    村井先生(篠田光亮)が共感して「たとえ無記名でも悪意の塊である言葉は心を破壊する恐ろしい力を持ってるんです。放った本人には分からない、他人にもわからない。言葉を受けた本人だけが息もできなくなるような苦しみを受けるんです。」と”書き込み”の負の側面を語ります。

    脚本を書いた”湊かなえ”さんがこのドラマで描きたかったことの一つかな・・・。

    作家ゆえに、作品を『悪意の塊である言葉』でもって評されることもあるだろうから、『言葉を受けた本人だけが息もできなくなるような苦しみ』を感じられたのかもしれないなぁ・・・。

    小生如き一般人のブログへのコメントでさえ『悪意の塊』が飛んでくることがあったし、2chなんかでは恐ろしくネガティブな言葉が延々と書き込まれていたり・・・。

    人は匿名で顔が見えなくなった途端に、『ダークサイド丸出し』になることがある・・・。
    −◆−

    杏子(長澤まさみ)の説明が続きます。
    「弟と名乗る人物から連絡が来ました。現在このサイトを運営してるのは兄ではなく自分だと。このときメンタリーを作った子は精神的に不安定になり、高校を退学しました。受験に失敗した頃から生じていた両親の不仲は退学によりさらに悪化し、母親は家で父親はめったに家に帰ってこなくなったそうです。でも、中傷の言葉を書き連ねて人たちはそれを知らない。彼の弟は書き込みをした人物を特定しようと試みました。」

    そして弟と名乗る人物は、書き込みをした者の中に一高の教師を見つけたのだそうです。

    杏子「人間性を否定している書き方ではないんです。でも受験番号を書き忘れて不合格になったことで、学校側を糾弾するのは間違っているということを言い回しを変えながら何度も何度も書き込んでいるのです。擁護意見を理詰めで潰していくので、流れが否定のままで続くのです。」「復讐計画に協力して欲しいと持ちかけられ、私は同意したんです。」

    前回から増え始めたセリフがますます増加してる長澤まさみ・・・。

    ひところよりは巧くなりかけてるけど、もうちょっとかな・・・。
    (長澤まさみの演技について、劇中の「ネットの書き込み」並みにネガティブなことを書いてはイケないね・・・。)
    −◆−

    書き込みをした教師が誰かを杏子(長澤まさみ)は知らなかったのですが、荻野教諭(斉木しげる)が自ら名乗り出て「自分の判断は間違っていない。自分を正当化するのに必死でした。管理職試験に受かるために。」

    一同、驚き・・・。
    杏子(長澤まさみ)、石川衣里名(山崎紘菜)以外の学校内の三人目の事件加担者が荻野だった。

    荻野「私は受験番号の書き忘れを0点にした事を今でも間違っているとは思いません。入試要項にそう書いてある。でも、ネットに書き込みをした事は深く後悔しています。受験会場で気づいていれば書かしていたかもしれない、でも私が気づいたのは、本部に帰ってからだった。これは受験生のミス仕方がないことなのだと自分に言い聞かせた。」

    過去が回想され、荻野が見ているサイトには「頭の固いやつに当たったのが災難だったな。」「来年はそいつを外してくれ」「名前とかわかんないの」などと書き込みが並んでいます。

    その時のことについて荻野は「目には見えない恐ろしい敵と戦っているような気分だった。」

    実体の見えない姿無き塊から攻撃されてるような気になったんでしょうねぇ。
    放っておくと世の中全てが敵になってしまうような感じでしょうか?


    荻野は気になって光一(中村倫也)の高校を訪ねますと、憔悴しきった光一とすれ違いました・・・。

    ドキュメンタリーが全国大会で賞をとったことがかえって中傷の対象になりネットで叩かれているのだと知った荻野。

    「愕然としたよ、自分はとんでもないことをしていたんじゃないかって。ひとりで妄想を膨らませて戦っているつもりでいた敵がまだ10代の傷つきやすい心を持った少年だったのだから。そんなことに気づけなかった自分が最低の大人だと恥じた。教師失格だと。どうにかして流れを変えようとしたが、すでに私だけではどうにもならない大きな悪意が渦巻いていた。その後彼は不登校になり、 3年生になる前に学校を辞めたことを知った。」

    それで、荻野は管理職試験を辞退していた・・・。

    荻野「すいませんが、掲示板に1件だけ書き込みをさせてください。」
    彼は「サクラチル」と一行だけの書き込み・・・。
    −◆−

    画面は田辺兄弟宅に切り替わります。

    兄・光一「俺が犯した過ちを手段に使って・・・」
    弟・淳一「学校側のずさんな対処法を公にするにはそうしたほうがイイと・・」

    光一「俺の気持ちも考えずに。それにお前は名乗りを上げてぶつかっていったわけじゃない。結局は掲示板に書き込んでいる連中--俺を罵ってた奴らと同じなんじゃないのか。何のリスクも冒さずに、ただ指示を出す。気持ちよかっただろ。」

    名前を出し、顔を出してドキュメンタリーを発表して返り血を浴びた光一と、匿名で入試妨害を行った弟の手法は対極・・・。

    湊かなえさんは、匿名性の真逆にあるものとして『放送部によるドキュメンタリー』を劇中に持ち出したのかぁ・・・。

    やっと作者の意図が理解できた(かな?)。

    で、淳一のPCにも「サクラチル」
    −◆−

    荻野は、償いのために入試妨害に手を染めたこと、石川絵里奈に指示を出していたことや午後からの入試問題をアップしたり答案用紙を持っていったことを告白。

    たしかに荻野ならそれが出来る立場にあったから、ミステリーとして正当である。

    荻野は「過去の償いだけではなく、元に戻って欲しい人もいたのです。その人を動かすためには事態をかなり複雑化する必要があった。昔はね。尊敬していたんですよ。どんな処分でも受ける覚悟あります。ご迷惑をおかけしました。」と言って的場校長(山本圭)に深々と頭を下げました。

    校長は荻野の思いを読み取ったのか「今回のことを受けていろいろと変えていけないことがあることが、携帯電話の対策は取ってあったはずだったが試験中に鳴ってしまった。立入禁止の構内に在校生が紛れ込んでいた私し、校舎内に保護者も入ってきた。答案用紙も足りなかったり2枚出てきたり。つけいられる隙がありすぎる。これを受けて、今後起こりうる事例をあげながら要望書を作成し、県に統一した対策を取ってもらうよう働きかけよう。」

    掲示板の文字が不気味に崩れ、桜の花びらのように・・・。
    名無しの権兵衛という文字も埋もれていきます。
    (名無しの権兵衛の崩壊は、匿名性の負の部分をシンボリックに描いたってコトでしょうねぇ。)

    まさに「サクラチル」

    校長が「それでは最終作業に入る。本年度の入試要項に基づき白紙解答用紙、受験番号記入忘れ、いずれも0点とする。」と毅然と言い放ちました。

    番組開始当初は、事なかれ主義で責任から逃げるようなタイプだった校長が、学校のトップとして白黒ハッキリした判断を口にした瞬間ですね。

    杏子「じゃあ46番の彼は。」
    校長「不合格です」

    坂本教諭(高橋ひとみ)は「いいじゃない、清煌学院に受かってるんだから。」

    「46番=淳一」が一高に落ちても名門私立に行き場を確保していたコトを知った杏子(長澤まさみ)は「すべてを懸けてって、わけじゃなかったんだ。」

    杏子が協力した相手は、退路を断って戦っていたのではなく、名を隠したうえに絶対に浪人することのない安全圏に居たわけだから、彼氏・寺島俊章(姜暢雄)の死を背負って戦った杏子は失望したかな・・・。
    −◆−

    合格発表の日。

    不合格を知った淳一に杏子が「今年の桜はいつ咲きますか?」と合い言葉・・・。

    淳一「不合格なのは、僕が犯人だとバレたから?」
    杏子「いいえ、入試要項にのっとり白紙および受験番号の記入漏れは0点だからです。」

    淳一「運が悪かったってこと?」
    この子、まだ事の本質を学んでいない??

    偽計業務妨害の罪に問われても不思議じゃ無かったけど、学校側が責任を問わないと聞いた淳一は「全部なかったことにして恩を着せるつもり?」

    杏子「失う覚悟の無いものは、責任さえとらせてもらえない。その代わり、身代わりになった人の想いを背負わなければならない。今回の件はすべてある人がひとりで受けてくれることになりました。」


    場面は入試翌日に遡り、杏子(長澤まさみ)が校長に「責任をとらせてください」と言って辞表を提出してる・・・。


    校長「受け取れないね。騒ぎを起こした場から逃げるのが責任を果たしたことになるのかね。」

    ハッとする長澤まさみは、さすがに顔立ちが整ってるなぁ。

    校長「やめることは責任を取ることにはならない。何らかの罰則があるとしても、それを受けるのは校長である私の役目だ。」

    杏子「校長先生は何もしてないじゃないですか。」
    校長「それが、上に立つ者の役割なんだ。」
    その通りですね。
    高い給料を貰ってるのは責任が重いから・・・。

    4億円も帳尻が合わないような政治資金管理について全て秘書に責任を負わせ、政治資金団体の長である自分の管理監督責任に言及しないような政治家はサイテーであります。
    そんな政治家には「未来」は無いのであります。


    で、校長は「これからの学校づくりを託してリタイアさせてもらう。保育園に通う孫がね、ジイジにお迎えに来てほしいって言ってる。どうだうらやましいだろう。ハハハハハハハ。」

    山本圭さん、やっぱり味があるなぁ。
    −◆−

    合格発表の日に戻って・・・。

    杏子「何かを変えようという気持ちを持つことが大切です。でもやり方は考えないといけない。責任を負うという覚悟を持って。」

    淳一「覚悟か」
    安全圏から事件を起こした淳一には覚悟が欠けてたものなぁ。

    杏子「あなたに言いながら自分に言い聞かせてもいます。」

    淳一「バカなことをしただけなのかな。」
    杏子「それでも、学校側は入試制度に対して上に要望書を出すことになりました。時間はかかりましたが、お兄さんがやったことは決して無駄じゃなかった。」

    兄・光一は通信制の高校に通うことにして、一歩足を踏み出しました。
    −◆−

    入学式の日がやってきました。
    1年A組には携帯中毒の芝田麻美(美山加恋)松島良隆(高杉真宙)、沢村翔太(清水尋也)らの顔が並んでいます。
    (小兎丸=高杉真宙、良い顔してる。)

    担任の杏子(長澤まさみ)が「今日のこの桜咲く日は決してゴールではありません。新しいステージのスタート地点です。私は高校とは社会に出る準備期間だと思っています。だからみんな、やりたいことに思い切りぶつかって下さい。ときには砕け傷つき涙を流すことがあることかもしれません。だけど私はそれらを全力で受け止めます。それが私の役目だから。どんなことにも恐れず、まっすぐ前を向いて行きましょう。」

    校長は責任を負うという役目があり、杏子(長澤まさみ)には一担任としての役割・・・・。
    生徒に向き合う大人としての役割もあるかな・・・。

    で、湊かなえさんは、杏子のセリフを通じて、安全圏から匿名でこそこそとコトを起こすのではなく、傷つくことを怖れずに思い切りぶつかって行けというメッセージを発したのかな・・・。

    一石を投じたのは田辺兄弟ではなく”湊かなえ”さん・・・。

    ブログを書いてる身故にネット世界を全否定するモノではありませんが、湊かなえさんが言いたいであろうことにも大いに共感いたしました。
    −◆−

    以上、じっくり描かれた『高校入試・全13話』

    コトが起きて以降の「起承転結」がハッキリしていて、多くの登場人物おのおのに丁寧な「キャラ付け」が為され、「リアル」に学校現場が描かれ、「伏線」の敷き方も見事でワクワクしました。

    良心的なメッセージをオチにしたので、結びが多少マイルドになってしましましたが、満足度の高いクオリティでした。


    唯一”派手どころ”は長澤まさみだけで、ジャニーズもオスカープロモーションもいないキャストにも好感を覚えました。
    (”派手どころ”である長澤まさみを地味に使ったのも正解)

    フジテレビでは月9のために道尾秀介が書き下ろした『月の恋人―Moon Lovers』がありましたが、今回の『高校入試』の方が小説手法の良さを出せたように思いました。

    面白かったです。



    ◇◆◇ 『高校入試』感想 ◇◆◇
    #12 #11 #10 #9 #8 #7
    #6 #5 #4 #3 #2 #1

    ◇◆◇ 連続テレビ小説『純と愛』感想 ◇◆◇
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