『平清盛』第48回「幻の都」★大仏を燃やして空気は読まず〜重衡(辻本祐樹)
- 2012.12.10 Monday
- 14:10
- NHKドラマ・番組
前回はダイナミズムが感じられたけど、今回はまた内面追求型のジットリしたストーリーでしたかねぇ。
−◆−
富士川の戦いの恥ずかしい負けっぷりもあって、すっかり風向きが悪くなった平家政権。
ストレス性の病で伏している高倉上皇を案じる徳子(二階堂ふみ)が、清盛に遷都が原因だと考えてることを述べちゃいました。
藤原兼実(相島一之)は、政権交代前の民主党が『後期高齢者医療制度』を廃止すべきだと強く訴えていたみたいな勢いで都を京に戻すべきだと主張。
ついには平家の名ばかり棟梁・宗盛(石黒英雄)が一門を集め、清盛に”還都”を具申。
月2万6千円の「子ども手当」にこだわりを見せる小沢一郎氏(日本未来の党)みたいに福原京にこだわる清盛は怒り心頭で「都還りはせぬ!!!」といって宗盛にキックをお見舞い!!!
(まさか福原が風俗の代名詞みたいになるとは清盛も思っていなかった!?)
これまでは”ぼんくら”ぶりばかりが目立った宗盛でしたが、今回は粘り腰を見せて「私は、重盛兄上とは比べものにならぬ、できの悪い男子。つたない棟梁でござりましょう。それでも私は平家の棟梁にございます。私が一門の役に立てることがあるとすれば、今、このとき、父をお諫めすることにござります・・・。還りましょう父上。平安京に、六波羅に。平家がすっかり孤立してしまわぬうちに。」と、縷々涙しながら必死の訴え。
なんだなんだ言っても、息子には弱い清盛は、福原遷都というマニフェストを捨てて”還都”することに・・・。
これを知った藤原経宗(有薗芳記)は、顔をくしゃくしゃにして「清盛入道が還都の意向を示しそうでおじゃる〜〜!」と公家連中にお知らせ。
有薗芳記さんの表情筋の動きが凄い!!!
特殊メイク・レベルです!!!
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清盛が福原での最後の区切りとして新嘗祭(今の勤労感謝の日)での”五節の舞”を安徳天皇に献上。
陶淵明の”帰去来辞”を唄う踊り手「帰りなん いざ〜♪ 田園将に蕪れなんとす〜 胡ぞ帰らざる〜 既に自ら心を以て〜 形の役と為す〜 奚ぞ惆悵として〜 独り悲しまん〜 已往の諌められざるを悟り〜〜 来者の追ふべきを知る〜〜実に途に迷うこと 其れいまだ遠からず〜〜 今は是にして昨の非なるを覚りぬ♪(キリが無い、以下省略)」
テロップで現代語訳が添えられました。
「故郷の田畑は荒れ果てようとしている、どうして帰らずにいられよう。これまで身を粉にして働き、自らの心を犠牲にしてきたことを恨み悲しむまい。過去を悔やむことをやめ、これから先のことを考えよう。まだそんなに大きく道を外れたわけではない。今日の決断は正しい、昨日までが間違いだったのだ・・・・。」
(複雑な思いを抱いてる清盛を刺激しないような、もっと当たり障りのない唄にした方が無難だと思うなぁ・・・。)
清盛の脳裏では、白河の前で荒々しく舞いを奉納した日のことや、海賊船、父・忠盛、義朝との一騎打ち、宋銭、兎丸の死、忠清の諫言などが走馬燈状態!!!
そして老人斑が浮かぶ頬に涙が一筋、はらり・・・・
”五節の舞”の場面は、舞と音曲が絢爛ではあるけど、無粋な小生には辛気くさい・・・。
真面目に見たら良い場面なのかもしれないけど、直感的には鬱々としてる印象。
良くも悪くも『平清盛』らしい場面でした。
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福原を去ることになった清盛に小兎丸(高杉真宙=高校入試・松島良隆)が「俺はここに残る。ここでお母と、豊藤太と荒丹波と麒麟大夫とで、お父の志を守る。」
オレは海賊王になる!?
小兎丸に静かに頭を下げた清盛。
兎丸(加藤浩次)への感謝とか、そんな気持ちが滲んだ場面。
「禿」に指示を出した時忠(森田剛)も、この場で謝りなさい!!
−◆−
さて源頼朝(岡田将生)・・・。
義経(神木隆之介)と弁慶(青木崇高)に「私は力で平家を倒し、その上につくる。今度こそ、まことの武士の世を。」
弁慶がジャンプして立ち上がり「是非ともそうして下さいませ!」
過去の経緯を色々知ってる弁慶は、清盛が狙って神輿に向けて矢を射た祇園闘乱事件を頼朝(岡田将生)に言及。
さらに、その後の顛末(第13話)を回想する弁慶。
鳥羽院(三上博史)が「神輿を射たように、朕を! 射てみよ!」
清盛は、”エアー弓矢”で鳥羽院を射抜くポーズ。(ゴールデンボンバーか!?)
”見えない矢”が当たった鳥羽院が「平清盛、そちこそが、神輿を射抜いた矢そのもの。白河院や朕が乱しに乱した世に報いられた一本の矢じゃ」
王家と渡り合ってきた清盛の怒濤の生きざまを瞬間的に感じ取った頼朝は「それを、あのお方はやり続けてきたのか。朝廷に入りこみ、その仕組そのものを壊し、変え、謗(そし)られながらも新しい都をつくる。それらは全て・・・。」と、驚愕とある種のリスペクト。
そして頼朝の目には、弓を引く若き清盛の姿が浮かびます。
ギリギリギリと弓をしぼる音。
鳥羽院に飛んだはずの”見えない矢”が時空を超えて頼朝(岡田将生)に命中。
腹を押さえて身体を前に折る頼朝。
右手を顔の前に掲げ、ジーパン刑事 (松田優作)が殉職した時に「なんじゃこりゃああ」と言いながら手に付いた血を見つめていたときのような体勢・・・。
実弾が当たったわけではない頼朝(岡田将生)が目を見開きます。(岡田君、男前やねぇ)
顔に日が差して<その時、私には分かった。 別れ別れになったかに見えた、我が父・義朝の道と平清盛の道は再び一つになると。 そしてそれこそが、私のつとめであると。>
−◆−
南都の僧兵の反乱を鎮圧するために向かった清盛の五男・重衡(辻本祐樹)が、あやまって東大寺の大仏を含めた南都の寺を焼き尽くしちゃった・・・。
これを知った藤原兼実(相島一之)は「我が寺興復せば 天下興福し、我が寺衰弊せば 天下衰弊す。東大寺創建の折の聖武帝の詔(みことのり)の一節にござります! 世に平家あるかぎり天下の乱れは収まりますまい。」と、この世の終わりみたいな顔つきです。
表情筋が凄い藤原経宗(有薗芳記)は、ビビりまくってまた凄い表情!!
一方、平家一門も沈痛な面持ちで集まっています。
知盛(小柳友)は父・清盛がキレたら拙いと考えたのか「重衡とて、大仏様まで燃やすつもりはなかったでしょう。」
宗盛(石黒英雄)は「強き風に煽られたのでございましょう。」と、重衡を庇います。
しかし意外にも清盛は弱気で「天は平家を見放した」などと力なく呟くだけ・・・。
そこに重衡(辻本祐樹)が帰還してきました。
その場の空気を読まずに、意気揚々と「父上、南都を攻め、悪僧の首四十九を討ち取り、また一人を生け捕りにしましてござります。思いがけず火が風にあおられ、伽藍を焼き尽くしてしまいましたが、なぁに、天もお許しくださりましょう。我らが焼いたは仏にあらず、仏を盾に狼藉を働く不埒者どもにござります。これを抑えられるは、我ら平家のみ。どこにも劣らぬ強き武門の我らをおいて他にはおらぬと、世に示しましてござりまする!」
悪びれもせず思いっきり元気よく爽やかに報告。
なんちゅう”バチあたり”な奴や。
これには、さすがの清盛も口が半開き・・・。
−◆−
重衡の”元気いっぱいの報告”を聞いて目をつぶって黙り込んでいた清盛でしたが「重衡・・・」と呟いて立ち上がりました。
いよいよ重衡にキック連発かと思いきや、清盛は「ようやった・・・ようやった」
一同唖然。
(『吉本新喜劇』なら、チャーリー浜や桑原和男たちのギャグで全員がコケる場面。)
西光(加藤虎ノ介)を蹴りまくって死罪にした時や、仏御前(木村多江)を兵士に殺させようとした時の清盛(松山ケンイチ)と比べるとと、天と地ほどの違いです。
で、一体何をもって「ようやった」と呟いたのでしょうねぇ?
ストレートに褒めてるとは思えないでしょ。
致命的な失策かもしれないのに・・・・。
−◆−
以上『平清盛』第48回でした。
第46話でダーク清盛が仏御前(木村多江)を殺そうとした場面だとか、前回の忠清(藤本隆宏)が死を覚悟して清盛に諫言を述べた場面だとかの『エッジの立った見せ場』に比べると、宗盛(石黒英雄)が”還都”を申し出る場面はインパクトが足りなかったし、頼朝(岡田将生)が”見えない矢”を受けた場面は観念的すぎたような・・・・。
いまさらながら、ドラマ全体が、どちらかというと内向的ですね。
あと、”回想シーン”が今に繋がる脚本は巧妙だとは思うけど、回想シーンが重なりすぎてテンポを消しちゃう気もします。
ただし、若き日の清盛が映ると、今の老いた清盛との差が「凄い」ことはよく分かりますねぇ。
役作りで体重を落とした感じがする松山ケンイチの頬が削げていて、そこに絶妙の「老けメイク」と「老け演技」だから、感心しきり・・・。
競馬場のパドックで今の清盛の「張りの無い肌」を見たら、絶対に清盛に賭ける人はいなさそうな感じです。
さあ、あと2回。
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