『平清盛』第47回「宿命の敗北」★伊藤忠清(藤本隆宏)の首を刎ねようと宋剣を・・・
- 2012.12.03 Monday
- 12:50
- NHKドラマ・番組
頼朝挙兵の知らせは奥州平泉で藤原秀衡(京本政樹)に匿われている義経(神木隆之介)の元へも届いた・・・。
『平清盛』の登場人物のデザインは基本的にリアルに見えるような衣装や化粧だけど、京本政樹だけは京本政樹の個性が優先されてる感じやねぇ・・・。
”タカラヅカ”だとか”ゲーム世界”だとかの登場人物みたいな・・・
で、兄・源頼朝(岡田将生)のもとへはせ参じたいと言う義経(神木隆之介)に反対する秀衡(京本政樹)は「いましばらく平泉にとどまり騒乱の成り行きを見守るがよい。」と諭します。
石橋山で大敗を喫した兄・頼朝のもとにどうしても駆けつけたい義経(神木隆之介)と、慎重派の秀衡(京本政樹)は意見が折り合いません。
そこに割って入ったのが京本政樹のメイクとは間逆な感じの汚れた風体をした弁慶(青木崇高)。
弁慶は弓の的のすぐ下に座り込み、「わしの頭の真上にあるこの的の中央を射抜いてくだされ。」と言い出します。
(りんごが手元にあれば頭の上に乗せたに違いない。)
驚く義経に「これを成し遂げれば、我らの運と度胸、秀衡様も得心しいてくれましょうぞ。」と豪胆な弁慶。
で、見事にオリンピック・クラスの腕を見せた義経が矢を的のど真ん中に命中させ、秀衡(京本政樹)は佐藤継信・忠信兄弟を義経に付けて奥州から送り出すことに・・・。
矢が飛んでくるのに、恐れることもなく微動だにしなかった弁慶(青木崇高)・・・実は目を開けたまま気絶していて前のめりにバタン・・・。
なんじゃ、このコントみたいなオチは!?
この運試し・度胸試しの弓のくだり自体も「いかにも英雄譚」って感じで、脈絡を感じないエピソードだったかなぁ・・・でも、ノンフィクションではなくってドラマだからこれでイイのでしょう。
−◆−
孫の維盛(井之脇海)を”頼朝追討軍”の総大将に任じ、弟の資盛 (森永悠希)を副将格につけて送り出した清盛(松山ケンイチ)は、宗盛(石黒英雄)や時忠(森田剛)たちと福原の内裏建築について重役会議。
清盛「紫宸殿の障子の件はどうなっておる?」
時忠「山水が良いのではないかと・・。」
清盛「大嘗会まであつ2月足らずじゃ、急ぎ進めよ。」
おもいっきり油断してるのかなぁ・・・。
孫の維盛・資盛に頼朝追討を任せて、息子たちや重臣と”障子の柄”について議論してるんだものなぁ・・・。
清盛の中での政治的なプライオリティが狂ってるわ。
そんな清盛の様子を懸念した息子たちは福原遷都の問題点に言及し、知盛(小柳友)は「今は戦のことのに考えるべきと存じます。」
老人斑が浮かんだ怖い顔の清盛は「ここで都づくりを諦めることは戦に負けるも同じだ!! 烏合の衆の挙兵などに惑わされてはならん!!!」と”昭和の体育会系”みたいな勢いで怒鳴りつけます。
政局、戦局ともに読み違えてる清盛は息子たちに「我が国づくりを成し遂げることこそが、まことの勝利と心得よ。武士とは勝つことじゃ。いかなることをしても勝ち続けることじゃ。」
息子たちはそれ以上意見できなくなっていて、清盛は「裸の王様」状態??
−◆−
下総で態勢を立て直していた頼朝のもとへ、二千騎という大軍を率いたワイルドな武将・上総広常(高杉亘)が参じ、馬から降りずに名乗りを上げたうえで「早う顔を見せよと主(頼朝)に言うてまいれ。」と北条時政(エンケンさん)らに居丈高な態度。
荒々しい役を演じる高杉亘さん、なんか好きやわぁ。
偉そうにしすぎてることを案じる部下に、広常(高杉亘)は「源氏の御曹司というだけでしょせんは都育ちの生白いお方であろう。場合によってはその首をとって一族郎党この広常の家来としてやろう。」と、スギちゃんよりもかなりワイルドな口調で言い放ちます。
広常(高杉亘)は、頼朝のことを”栗原類”みたいなタイプだと想像しとるんやろなぁ。
イケメンの頼朝(岡田将生)が表にやってきて「そなたが上総広常か。去ね(いね)。遅参した上に下馬もせぬような者は信ずるに値せぬ。もののふの道をわきまえぬ二千騎など、何の役に立つ。早う去ね!」とキッパリ。
岡田君、かっこいいセリフもらったなぁ・・・。
「お待ちくださいませ!」と下馬して頼朝の面前でひれ伏した広常(高杉亘)が「お見逸れいたしました。あなた様こそ、御大将の器。この広常、平家を打ち滅ぼすお手伝いを致しとうございます。」と額を地べたに擦りつけそうなまで頭を垂れます。
切り替え早っ!!
居丈高な”上から目線”から一転して、土下座にいたる変転が早い!!
竹を割ったような性格だァ!!!
こういう時代劇的なセリフ満載の場面は結構好きなんだけど、コロッと態度を変えた広常に「御大将の器」と言わせて、手っ取り早く源氏の御曹司・頼朝に権威づけしたプロセスは分り易すぎかも・・・・。
メインは平家だから仕方ないか・・・・。
−◆−
さて、頼朝追討軍の総大将・維盛(井之脇海)ですが、こちらのほうが広常(高杉亘)が言うような「都育ちの生白いお方」でありまして、大将の器ではなくせいぜい係長クラスの器ですかね。
子供の頃に弓の稽古をしていたとき(第37話)に、伊藤忠清(藤本隆宏)から「鍛えようがまるで足りません。それでは武士の名門、平家の男子など名乗れませんぞ。」と注意された維盛が「舞や糸竹の芸(管弦楽器系)の方が好みじゃ。弓などできずとも生きていけよう。」など言ってましたから、まともな大将になるはずがありません。
他にも、清盛から「王家に連なる一門だから、いかなる時も恥を掻かぬようシッカリ仕込め」と指示を受けた経盛(駿河太郎)が維盛と資盛に舞の稽古を付けるなんて場面(第40話)もありましたし・・・。
武術より”芸ごと”が優先なんだもの・・・。
で、六波羅からの出陣日をめぐり即時出陣を主張する青瓢箪・維盛と、日柄が悪いため出陣を延期しようとする忠清が口論。
忠清は「今は十死一生の日(すべてに大凶。特に戦闘に悪い)。ここで出陣しては到底生きて帰れる見込みがありませぬ。」
陰陽道とか縁起担ぎしない現代っ子の維盛(井之脇海)は聞く耳を持ちませんが、忠清は「戦とは命をかけるもの。大将たるもの神仏の御加護を願い、その思し召しを知るが肝要にございます。」と諫めます。
嫌な感じの表情を浮かべる維盛(井之脇海)は、忠清を押し切り「いさ出陣じゃ。」
−◆−
富士川をはさんでの源氏軍と維盛の平家軍が対峙。
平家軍は兵糧不足に悩み、兵士の腹がグーグー鳴っております。
小沢一派が離党した民主党みたいに脱落者が続出。
士気が低下し、あからさまに文句を言ってる兵士もいます。
この状況を打開しようとする維盛(井之脇海)は「遊女(あそびめ)を連れてこい。」と忠清(藤本隆宏)に命じます。
呆れた忠清は「恐れながら、戦を控えた陣中に女(おなご)を呼ぶなど聞いたことがござりません。」
維盛は「大将の言うことが聞けぬのか!!!」
忠清は維盛を睨みつけます。
藤本隆宏さんのメンチ怖い!!
だけど、最後は大将・維盛の指示通りに陣中に肌もあらわな遊女がやってきて酒宴になります。
密かに陣地に近づいてきた源氏軍。
「酒じゃ、酒。」「ハハハハハ」
遊女が舞い、笑い声が漏れるダレきった平家の陣地の様子に武田信義(永澤俊矢)は唖然としています。
沼地にいた水鳥が驚いてグワッ、グワッ、バサバサバサ〜〜〜。
水鳥の羽ばたく音でビックリこいた平家軍は「敵襲じゃぁ〜!」「逃げろ〜〜!」と慌てふためき、維盛(井之脇海)もフリーズして指示を出せないままに総崩れ・・・。
平家軍のあまりのトホホぶりに、頼朝(岡田将生)は「あのお方はどのような二十年をお過ごしになったのであろうか。まことの武士はいかなるものであると平清盛は考え、生きてきたのか・・・」
−◆−
六波羅に逃げ帰った維盛の前に現れた清盛(松山ケンイチ)は完全にぶちキレていて、孫の維盛をボッコボコに殴りつけます。
清盛「何たるざまじゃ! 戦に赴き戦いもせずにおめおめと帰って来るとは、それでも平家の男子(おのこ)か!! 忠清、お前がついておりながら何じゃこれは。」
「面目次第もございません。死んでお詫びをしとうございます。」と忠清。
盛国(上川隆也)と時子(深田恭子)が何とか取りなそうとしますが、清盛は「死を持って贖うのが相当であろう。」と死刑判決!!
覚悟の上で清盛の前に進み出た忠清が厳しい表情を浮かべて諌言し始めます。
「殿。伊藤忠清、死ぬ前に申し上げたき儀がございます。殿は今、維盛様に仰せになりました。『それでも平家の男子か』 維盛様はまごうことなき平家の男子にございます。戦というものをご存じなく、出陣には吉凶の日取りも選ばず、兵の進退も心得ず、陣中に遊女を入れ、水鳥の羽音に脅えて戦場から逃げる。それこそが、まごう事なき平家の男子の姿にござります!」
維盛(井之脇海)は肩身の狭そうにしています。
宗盛(石黒英雄)が制止しようと声をかけますが、言葉を続ける忠清は「殿は、保元の戦、平治の戦を勝ち抜いてこられました。武士の世を夢見て、財を投げ打ち、公卿方、法皇様と渡り合い、一門を公卿の家柄まで引き上げられました。音戸の瀬戸を広げ、大輪田泊を整え、宋との交易をなさりました。厳島の社を新たにし、横へ横へと広がる世を目指されました。ご息女を入内させ、御孫君を帝となされました。そしてその帝をいただく新しき国を福原に作ろうとなされております。」と、総集編みたいなことを述べ立てます。
清盛が忠清を睨めつけて「何を当たり前のことを言うておる・・・。」
すると忠清はいっそう声に力を込めて「殿。平家はもはや武門ではござりませぬ。殿ご自身が、、、もはや武士ではございませぬ!」
これぞ忠臣の鑑!!
『名は体を表す』とはこのことです。
「10年以内に原発完全廃炉」「発送電分離など電力システム改革」「消費増税法を凍結」「特別会計の全面見直しをはじめとする政治改革・行財政改革・地域主権改革によって財源捻出」「子ども1人当たり中学卒業まで年間31万2000円の手当支給」「後期高齢者医療制度の廃止」などと耳障りのいいことばかりを公約に並べる新党よりも、伊藤忠清みたいにあえて厳しいことでも口にするサムライのほうが信じられる気がするわぁ。
で、思いがこみ上げて顔を伏せた忠清(藤本隆宏)は最後に「殿が目指した武士の世は、武士のままでは作れぬものにござりました。ご無礼をつかまつりました。」
藤本隆宏さん渾身の演技!!
武士の世を目指しながら、平家が武士でなくなっている矛盾を突いたセリフもよくできてますねぇ。
征夷大将軍を頂点とする幕府という体制ではなく、武士が公家化してる平家政権の有様が良く見て取れます。
−◆−
首をはねられるべく庭に座した忠清(藤本隆宏)。
正気を失ったかの如き清盛(松山ケンイチ)がTDLのシンデレラ城の地下にあった”光の剣”みたいな感じの宋剣を振り上げますが、剣の重さに負けて尻餅。
五十肩で剣を持ち上げ続けるのは無理だったか!?(気持ちがよく分かるよ)
そして、わんさかとフラッシュバック。
清盛が平太(前田旺志郎)だったころ父・忠盛(中井貴一)が「生きるとはいかなることか。それを見つけたとき、心の軸ができる。心の軸が体を支え、体の軸が心を支えるのだ。」と教えを説いていたことが頭に浮かび、重なるようにして兎丸(加藤浩次)、義朝(玉木宏)、忠正(豊原功補)たちのことも・・・。
なるほどなぁ、心の軸が失われて体の軸も失せた清盛には剣を支えることができないってことかぁ・・・。
清盛が宋剣を落としたくだりは、凄く上手く作られた場面だったと思いました。
中井貴一のセリフの頃から既にここまで計算づくでドラマを作ってたのなら、こりゃ凄まじい伏線。
というか、過去46回がこの場面に連なる伏線!?
45分×46回とは、なんとまぁ長い「前フリ」でありますねぇ。
−◆−
とにもかくにも、忠清=藤本隆宏さんの諫言が圧巻でした。
老・松山ケンイチも素晴らしい演技だし・・・。
ハキハキしたセリフ回しの政子=杏にも惚れ惚れ・・・。
源氏の動きも出てきて、遅きに失しましたがようやくドラマがダイナミックに動き始めました。
◇◆◇ 連ドラなど感想 ◇◆◇
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