BS時代劇「薄桜記」第11回(終)雪の墓〜山本耕史と柴本幸に泣けた!!
- 2012.09.21 Friday
- 22:54
- NHKドラマ・番組
谷中・七面社での丹下典膳(山本耕史)と堀部安兵衛(高橋和也)の心と心の対決。
雪に横たわる典膳と千春(柴本幸)・・・。
清らかすぎて落涙・・・。
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とある旅籠で安兵衛(高橋和也)、近松勘六 (松本実)、片岡源五右衛門(山下規介)、堀部弥兵衛(津川雅彦)が討ち入りの段取りを確認しています。
日が変わった15日に討ち入りだというこのタイミングで、安兵衛が「討ち入り前に丹下典膳を片付けて参ります。」と申し出ます。
弥兵衛らは討ち入りに遅れることも懸念しますが、事前に典膳(山本耕史)と出会う約束をしている安兵衛は「それなりの手立ては打っております。」として譲りません・・・。
このシーンでも、津川雅彦が味のある演技!!
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一方、吉良邸の典膳は、千春(柴本幸)に「わしは、だんだん浅野家の残党が羨ましくなってきた。お家は断絶しても、浪人になっても、あの者たちには生きがいがある。」「死に場所のことじゃ。」
千春は浅野方の理屈に得心がいかないのですが、典膳は「少なくとも浅野方は己を捨て、命を捨てておる。」「なりふりかまわず、くみ取り屋に身をやつし、八百屋に化け、奥女中になりすました・・・あの者たちは死に場所を見つけたのじゃ。死ぬることが生きがいなのだ。」と深刻顔で語ります。
死ぬことが生きがいであるという、一見矛盾した壮絶な死生観!!!
典膳「その生きがいを、ぶちこわそうとしてるのは誰だ。嵐に立ち向かう小舟を沈めようとしてるのは誰だ!」「邪魔者はこの儂じゃ。丹下典膳に他ならぬ。」と珍しく冷静を失ったように声を荒げます。
油断がはびこり、たがが緩んでいる”吉良・上杉方”の中で暮らす典膳さんは、武士らしい生きがいを模索して心を乱してる??
そんな典膳の顔を見据え「いいえ違います。あなたはただ・・・」と話しかけた千春さん。
それを遮り「安心せい。心の内の雑念を、ちと言うてみただけじゃ。いかなるときもお前を見捨てることはない。」と、冷静を取り戻した様子を見せる典膳さん。
黙って頷く千春。(美しい!!)
「千春は丹下典膳の妻じゃ。」
頭をもたせかけ、静かに寄り添う千春・・・。
典膳は「武士である限りいつ死ぬかは分からんが、例え死んでもお前の心の中で生きていく。よいな。」
こんなことを言う典膳さんは、この会話のさなかに「死に場所」を見つけ、千春さんを心配させないように遠回しな表現で『死にますよ宣言』をした感じです。
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千春が吉良上野介(長塚京三)に呼び出されて席を立った間に、勘蔵 (内野謙太)を呼んで外出の手配をさせる典膳(山本耕史)。
出かける前に、縁結びの御利益がある”文鳥”をカゴから放してやりました。
討ち入りに巻き込まれないようとの配慮と、自分はもうここには戻ってこないという覚悟が滲み出ています。
小生は、放たれる文鳥を見ただけで早くも泣きそうです。
で、典膳の不在に気づき、駕籠に文鳥が居ないことでピンときた千春さんは、勘蔵 (内野謙太)をきつく問いただして典膳の行方を聞き出します。
吉良邸の茶会に招かれていた父・長尾権兵衛(辰巳琢郎)が乗ってきた駕籠を使わせて貰い、典膳が安兵衛と会うために向かった谷中の七面社に急ぎます。
駕籠の中で半端なく心配してる千春(柴本幸)の、青ざめた顔の美しいこと!!!
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雪がしんしんと降り続けている谷中の七面社で、堀部安兵衛(高橋和也)と顔を合わせた丹下典膳(山本耕史)。
短い会話の後、安兵衛はさりげなく場所を変えて話をしようと持ちかけ、駕籠に乗って欲しいと申し出ます。
しかし典膳は「駕籠には乗らぬ。」「わしを何処へ連れて行こうというのじゃ?」
安兵衛は「お身柄を一晩だけお預かりしとうござる。」「曲げてお願い申し上げる」と頭を下げます。
師匠で親友たる典膳に危害を加えたり死なせたりしたくない安兵衛の心の内が滲み出ています。
典膳「ははあ、なるほど、討ち入りは今夜だな。」「ならば、吉良屋敷で会おうではないか。」
あくまで低姿勢な安兵衛は「なにとぞ駕籠へ。」
頭を下げる安兵衛に「わしの面目はどうなる。逃亡したと思われるではないか。」と、普段の典膳とは雰囲気の違う物言い。
窮した安兵衛は「お主を手にかけとうござらぬ。」と声を絞り出します。
高橋和也も、味のある芝居をするなぁ・・・。
典膳「手にかけとうないとは笑止千万。 お前に儂が斬れると思うのか! 思い上がるな!」
明らかに様子が変です。
「ふん、堀部安兵衛ともあろうものが、わしを捕らえて押し込めようとはな。見損うたぞ。」
やはり、いつもの典膳さんと趣が異なります。
安兵衛「窮余の策でござる。」
典膳は「尋常に勝負せい。」と刀を抜きました。
典膳が先に刀を抜くのを初めて見た気がします。
安兵衛「わかってくださらぬのか。」
典膳「問答無用!!」
吉良邸での千春との会話にも出ていましたが、安兵衛との無理筋の会話からも、典膳が酷く死に急いでいる様子がうかがえます。
ヤバイです。
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安兵衛も刀を抜いて応戦。
激しく剣を交える安兵衛(高橋和也)と典膳(山本耕史)。
討ち入り前の安兵衛は「ここで命を捨てるわけには参らぬ!」
押され気味の安兵衛の助太刀に入った浅野方の近松勘六、片岡源五を軽くかわした典膳。
典膳「どうした安兵衛!」
ついに安兵衛を桜の下に追い詰めた典膳が「覚悟。」と呟き、
大きく刀を振り上げました。
その瞬間、足下に落としていた刀を安兵衛が突き上げると、典膳の腹に深々と突き刺さりました。
白雪の上に典膳の血がしたたり落ちます。
呆然としている安兵衛に小さく微笑みかけ、かすれた声で「これでよかったか‥」と話しかける典膳。
さらに「わしにも、死に場所があったな。」
崩れ落ちる典膳を受け止めた安兵衛に「心置きなく本懐を遂げよ‥。」と語りかけ、息を引き取った典膳。
場面を見て泣いて、この文章を書きながらまた涙がじわり・・・。
討ち入りをすれば、どっちに転んでも死ぬことになる安兵衛に、わざわざ斬られに行った典膳!!
隻腕の典膳が刀を大上段に振り上げたら、下段に隙ができて致命傷となる攻撃を受けることは分かりきっていたのに、それでも敢えて隙を作ったんですもの・・・・安兵衛たちの邪魔にならないように斬られることで、死に花を咲かせた・・・・。
戦いたくない安兵衛を挑発して交戦に誘導し、討ち入りする安兵衛に本懐を遂げるように告げながら典膳が息を引き取るまでの七面社での顛末は、素晴らしいシナリオでした。
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典膳の死体に簑を被せ、傘を差し掛けたうえで、リスペクトと感謝の気持ちを込めて手を合わせて去って行った安兵衛たち・・・・。
入れ違いで千春(柴本幸)の駕籠が到着。
雪の中に横たわっている典膳を見つけます。
「あなた、あなた・・・・目を開けてくださいませ。」
典膳の身体に積もり始めた雪を払いながら、身を寄せて温めようとして典膳をさすり続けます。
無常にも雪は降り続けます。
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15日未明、吉良邸に四十七士が討ち入り敢行。
安兵衛も果敢に斬りかかって・・・。
七面社に場面が変わると、先ほどよりも一層雪が積もっていて、典膳(山本耕史)に寄り添う千春(柴本幸)の上にも雪が被さっています。
もう千春さんも息が有りません。
典膳と千春の”永遠の愛”を覆った『雪の墓』。
セリフ一つない静謐なラストシーンが最高に美しい!!!
涙、涙・・・・。
七面社で千春と典膳の『出会い』に始まり、七面社での『雪の墓』で物語は閉じました。
時代劇の痛快さ、恋愛モノとしてのワクワク感、悲恋物語の痛切さ、友情・義理人情を貫く美徳、忠臣蔵を軸にした武士の死生観、などなど、ドラマの隅から隅まで文句なし!!!
セリフも美しかったし、山本耕史、柴本幸、高橋和也ら配役もバッチリでしたし、参りました!!
NHKさんには『はつ恋』と『薄桜記』で情緒を揺すぶられ、泣かされました。
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