BS時代劇「薄桜記」第10回〜典膳「春が来れば、良いのだが‥」
- 2012.09.14 Friday
- 23:06
- NHKドラマ・番組
大詰めを迎えて、いよいよ隅から隅まで内容のある『薄桜記:第10回』でした。
セリフの一行一行すべてにゾクゾクします。
−◆−
堀部安兵衛(高橋和也)の消息をたずねて堀内道場にやって来た丹下典膳(山本耕史)。
堀内正春(寺泉憲)、高木敬之進(葛山信吾)池沢武兵衛(青山草太)を前にして、安兵衛に借りがあるのだと話します。
「浅野家への仕官を勧めたのはそれがしであった。今更悔いても詮無いことながら浅野家が滅亡するとは夢にも・・・。」
巨大企業『JAL』が再生機構のお世話になったり『シャープ』が鴻海に救いを求めるような思いもしないことがあるのだから、典膳が浅野家の運命を予想できなくても仕方ない。
片腕を亡くし浪人になった典膳を、長屋でこまごまと面倒を見てくれた”恩義”があり、やがて安兵衛と「肝胆相照らす仲」となったことを淡々と語る典膳さん。
さらに「討ち入って本懐を遂げようが遂げまいが、不埒者として召し捕らえられ死罪は免れますまい。それがしは安兵衛を死なせとうござらぬ。」と・・・。
情に満ち満ちた言葉に、敬之進もじ〜んと来ている様子。
堀内「仇討ちを食い止めたいのだな。」
「恨むべきはご公儀であり、筋違いである。理に適うておらん」と安兵衛に言うてきかすつもりだと典膳が口にしたとき、障子越しに人影・・・。
堀内道場にかくまわれていた安兵衛(高橋和也)が、典膳の真摯な言葉を聞いて身を隠しておられなくなったのです。
典膳と顔を合わせた安兵衛は、浅野残党の内実を隠し通して、京都の大石でさえ風俗通いで「仇を討つどころか綿も打てません。」と”ちょいエロ”の冗談で茶化します。
真剣顔を崩さない典膳は「もしも討ち入ってくれば、真っ先にお前を斬る。」
安兵衛「はははは、くわばら、くわばら」と、いつもの調子で答えます。
堀内道場での『今更悔いても詮無い』『肝胆相照らす仲』などのセリフだけでも小粋でシビレちゃいます。
そのうえ、安兵衛の身を案じる典膳の誠実さがカッコイイ!!
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吉良上野介(長塚京三)に呼ばれた典膳(山本耕史)。
部屋には千春(柴本幸)がいて、上野介が「千春は今日から儂の侍女じゃ」
そして、高く改修され忍び返しがしつらえた塀を指さし「せっかくの庭が台無しではないか。余命幾ばくも無いこの目を慰めるには、美女の顔でも見るしか無かろう。」
そんな軽口を叩いていたら妻・富子(萬田久子)さんに叱られますよ。
上野介は、年が明けて典膳を仕官させた暁には屋敷も与えて知行二百石だと約束。
「口約束では無いぞ。遺言状もしたためておいた。」
凄い好条件!!
飄々とした上野介ですが、秘密経路から打ち掛けを羽織って逃げるよう家臣団が計画していることについて「儂はモグラでは無い」と言い、みっともなく死ぬようなことはしない旨をキッパリ。
加えて「典膳も千春も儂には構うな。」と上野介。
風流人で懐の深さもある吉良上野介(長塚京三)は、なかなかチャーミングであります。
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近松勘六 (松本実)と片岡源五右衛門(山下規介)が潜伏するとある旅館に安兵衛(高橋和也)がやって来ました。
堀部弥兵衛(津川雅彦)が逗留しており、「儂がおらぬと卜一(ボクイチ)は斬れん」と意気軒昂。
上野介の「上」の字をパーツに分けて卜一(ボクイチ)と符丁にして呼んでいる模様です。
上野介の顔を知ってるのは弥兵衛(津川雅彦)だけであって「取った首が間違っておったら天下の恥じゃ。」と首改め・首実検の役目を果たす気マンマンなのです。
”高橋和也”を相手にする”津川雅彦”の達者な演技を見てるだけで楽しくなってきます。
で、片岡源五右衛門の手には吉良屋敷の設計図が・・・。
機密図面がダダ漏れ??
弥兵衛(津川雅彦)は、上野介の首を取ったあと、泉岳寺の浅野内匠頭の墓前に首を供え、全員うち揃って腹を切るのだと、安兵衛(高橋和也)に討ち入りプランを説明。
時期は年内。
既に落伍した者や割腹した者がおり、先延ばしすると仲間が更に減ることを弥兵衛(津川雅彦)は懸念しています。
離党者が相次ぐ民主党みたいですけど、民主党には腹を切る覚悟が無いから解散は一日でも先に延ばしたいようですね。(『薄桜記』にはまったく関係ない‥)
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白竿屋長兵衛(高嶋政伸)を介して、堀部安兵衛(高橋和也)が典膳(山本耕史)と会談したいことを打診。
典膳が了解すると白竿屋長兵衛が「合点承知の助」と返事して会談をセット。
合点承知之助(がってんしょうちのすけ) って、久しぶりに耳にした感じ・・・。
で、白竿屋で差しの会談。 (1対1で向き合う典膳と安兵衛は、モロボシ・ダンとメトロン星人みたいであります。)
仮定の話だとしながら、もしも浅野家の旧臣が討ち入ったらどうするかと尋ねる安兵衛。
典膳「そちを一番に斬る。」
安兵衛「何のために? 仕官のためですかな?」
典膳「たわけを申すな! わしはお前たちの過ちをただすために斬るのだ。」
この答えを引き出した安兵衛は、世間は浅野家に肩入れしており、仇討ちを遂げれば「大喝采となりましょう」「吉良の首を亡き殿の墓前に供え、我らがうち揃って切腹すれば、賞賛の声はうねりとなってご公儀を脅かし、武勇は末代までの語り草となりましょう。」と、世間の反応を予測し、「これほど誉れ高い死に場所が、他にありましょうか。」と言い切ります。
たしかに21世紀になっても12月には『赤穂浪士』がドラマになること再々ですから、武勇は後世においても語り草であります。
世論を味方につけた浅野家の旧家臣を妨げるようなことをすれば、典膳は犬死になると言う安兵衛は、吉良邸から立ち退いて欲しいと申し出ます。
真っ直ぐな男・典膳は「理屈に合わん」
理屈では無いとする安兵衛「犬死には不似合いでござる。」
安兵衛の状況分析と思いやりがイケてます。
高橋和也の味のある演技が加わって、温かさがよく出ています。
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間取りが詳細に示された絵図面が無くなったことが吉良邸で騒動になっております。
あろうことか、吉良家家老・左右田孫兵衛 (山本龍二)が、絵図面を持ち出したのは千春だという話があるのだと言ってきます。
斉藤宮内 (酒向芳)は典膳に疑いの目を向けております。
家老たちは疑心暗鬼。
幸い、”くみ取り屋”が奥女中の”しのぶ”から絵図面を入手したことが明らかになって、典膳、千春の嫌疑は晴れました。(水洗トイレしか知らない世代には”くみ取り屋”はイメージできないでしょうねぇ)
身内に疑心暗鬼の目を向ける様子を嘆く典膳は、千春(柴本幸)に「浅野方は死にもの狂いじゃ。それに引きかえ吉良方は・・・」
加えて家老たちの内心を分析し「儂には手柄を立てさせたくないようじゃ。」
千春「弱みを見せたくないのでしょう。本心は別儀と存じます。」と、いつもの落ち着いた口調。
典膳「ご隠居様の遺言はありがたいが、儂は吉良家に仕官せぬかもしれぬ。」
安兵衛の言葉や、典膳を疎ましく思っている家老衆のことを考え、仕官のために客分となっているのではないことをハッキリさせたいのでしょうね。
二百石、勿体ない。
千春さんは慌てず騒がず「そのお話は春が来てからでよろしゅうございます。」
典膳は討ち入りを予感して「春が来れば、良いのだが‥」と曇り顔。
前途は暗いのでありますが、今現在、典膳の目の前に千春さんが居て、吉良家内部のゴタゴタした状況に対する苦い気持ちなどを口にすることができるようになって本当にヨカッタです。
一人で腹の中に収めておくことに比べたら雲泥の差です。
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取り調べを受けていた奥女中しのぶが舌を噛んで自害。
典膳「死に花を咲かせたな。死ぬことで己を活かした。」
千春(柴本幸)は不吉な言葉に顔をしかめています。
ああ、いよいよ次週最終回。
勿体ない。
『絵図面盗難事件』だけで1話できそうなくらいなのに・・・。
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