NHK BS『SHERLOCK (Season2)』第3回〜ライヘンバッハの滝は、屋上に
- 2012.08.06 Monday
- 13:37
- 海外ドラマ
エラのカウンセリングを受けるジョンが、弱々しく口にした言葉は「親友のシャーロックが死んだ」。
そんな場面から『SHERLOCK (Season2)』第3回はスタート。
例のコナン・ドイルの『ホームズ最後の事件』で、モリアーティ教授とホームズが”ライヘンバッハの滝”に落ちて死んだと思われたときのように・・・。
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現代版『SHERLOCK』では、盗難された絵画『ライヘンバッハの滝』(1804 ウイリアム・ターナー作)を取り戻す活躍が世間の耳目を集め、シャーロック(ベネディクト・カンバーバッチ)が”ライヘンバッハ・ヒーロー”と称されています。
マスコミは持ち上げるのも早いけど、突き落とすのも早いから、恐ろしいんですけどね。
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シャーロックが持ち上げられている丁度その頃、モリアーティはロンドン塔の宝物室、イングランド銀行の大金庫、そして重警備の刑務所として知られるペントンヴィル刑務所のセキュリティを破るお仕事にいそしんでいます。
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モリアーティがスマホのアイコンをタッチするたびに、ロンドン塔、イングランド銀行、ペントンヴィル刑務所にびゃ〜〜っとクラッキングする様子が、シンプルなんだけど効果的な映像で表現され、ドイル版の時代と現代のギャップ感が醸し出されます。
そして、すこし小ぶりのハンニバル・レクター的なモリアーティが、英国王室の宝物が納められた強化ガラスのボックスにクラシック音楽に合わせて体を踊らせるように一歩ずつ近づき、ガラスに貼り付けたダイアの粒を目がけて消化器をぶつける場面には痺れました。
演出がカッコイイ!!!
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シャーロックが鑑定人として《モリアーティ裁判》に出廷。
裁判所で、”追っかけ”だという女性が声をかけてきますが、シャーロックは簡単に彼女の素性を見抜きました。
キティ・ライリーという二流記者が隠密取材を仕掛けてきたのです。
彼女はいきなり「あなたとジョン・ワトソンはプラトニック?」
現代を象徴するこのネタ、けっこう好きです。
自分のことを「賢くて信用できるわよ。」と述べ、真実を書く味方になるとか言ってるキティ・ライリー。
シャーロックは「君は人生初のスクープを狙う売れない記者。はいてるスカートは上等だが二度もすそ直ししている。これしかまともなスカートが無い証拠だ。・・・」云々とホームズ節を炸裂させます。
駄目押しに「君はハングリーだが信頼できる人間には見えない。君に言葉を贈るとしたら、こうだな『君には吐き気がする』」と容赦なく蔑みの言葉を投げかけちゃう。
信頼できない二流記者であることは正解なんですけど、余計な恨みまで買わなくても良いのにね。
橋下市長が週刊誌に嫌われて、出自だとか不倫だとかを記事にされたみたいに、シャーロックも意趣返しされちゃいますよ。
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裁判でモリアーティは、一切の反論もせずに無罪放免を勝ち取っちゃいました。
陪審員を脅迫するなどお手の物です。
そんなモリアーティが、ベーカー街のシャーロックの部屋を訪ねてきました。
たわいも無い会話に見えたのに「最後の問題が何か教えたぞ。」「君を落として借りは返す。きっと返す。」と思わせぶりなことを言って去って行きました。
『 Fall=滝 』という単語には、落ちるという意味もありますから、ライヘンバッハ・ヒーローが落ちると言うことには”象徴的な意味合い”が感じられますね。
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『外交官子弟誘拐事件』が発生。
シャーロックは、聖バーソロミュー病院の法医学者・モリー(ルイーズ・ブリーリー)の顕微鏡など分析器具を拝借して、屋敷内に残された足跡を分析。
もはや、ひとり『CSI』状態。
『BONES』のホッジンズや、『クリミナルマインド』のBAU(行動分析課)の面々、『メンタリスト』のパトリック・ジェーンらの能力が、シャーロック一人に詰まってるような印象です!!!
で、分析に入れ込んでるシャーロックに、片思いのモリーが「なにかあったら思い出してください。私のこと。」
重要なセリフが、さりげなく配されていました。
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シャーロックの分析と推理で、レストレードたちが誘拐された子供2名の救出に成功。
ところが、救出されたクローデットという女の子がシャーロックの顔を見るなり「きゃーーーーーーーっ」と悲鳴を上げて錯乱。
ドノバン巡査部長が、これで疑念を抱きます。
手がかりは足跡しか無かったのに、あまりに手際よく被害者に元にたどり着けたのは、シャーロックが犯人だからではないか??
良い格好したいための自作自演ではないのか??
レストレード警部は否定しますが、ドノバンが抱いた疑念はどんど大きくはなって、ついにはシャーロックを連行することに・・・。
モリアーティの計略に、まんまと乗せられているロンドン警察の面々であります。
シャーロックとジョンはとりあえず逃亡します。
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モリアーティは、シャーロックからむげに扱われた二流記者キティ・ライリーも利用して、これまでの数々の事件はシャーロックの自作自演で、モリアーティは犯人役としてシャーロックに雇われた俳優リチャード・ブルックだという暴露記事を新聞に載せさせました。
ジョンの前でもモリアーティは俳優になりきって「ごめんなさい、雇われただけなんです」
親友ワトソンをも疑心暗鬼に陥らせる作戦です。
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少し元気が無いように見えるシャーロックがモリーに「僕はもうすぐ死ぬ」なんてことを言っております。
シャーロック「僕が思うような人間じゃ無くても助けてくれるか?」
モリー「何が必要?」
シャーロック「君だ。」
この会話に隠された意味は・・・。
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病院の屋上でモリアーティとシャーロックが最後の対決。
ビージーズの『ステイン・アライヴ♪』を鳴らしているモリアーティの不快な雰囲気が、なかなかです。
警察に自作自演と思わせ暴露記事でもってシャーロックの名を汚したモリアーティは「楽勝だった。君も凡人だった。」
物語も終盤だというモリアーティは、シャーロックに自殺を強要します。
病院の屋上が、ライヘンバッハの滝なんですね。
ジョンとハドソン夫人(ウーナ・スタッブズ)とレストレード警部を狙撃する用意が出来ているが、「自殺して物語が完結すれば別だ」とモリアーティ。
「汚名にまみれて死ね。」
シャーロックの名声を奪うことこそが最大の目的みたいです。
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1分間時間をくれと言ったシャーロックが、屋上のヘリで笑い始めました。
少し泡を食った様子のモリアーティは「抜けがあったか!?」
『抜け』という言葉を用いたこのセリフ、なかなか良いですね。
抜け目が無いことが最大の特色であるモリアーティが「抜け」を気にするところが良い。
シャーロックは「僕は中止しないし」と語ったモリアーティの言葉を踏まえ、彼がその気になれば狙撃中止命令を出せることに気づいたのです。
どんな手を使ってでも中止命令を出させると迫るシャーロックは「僕は君だ。どんなことでもする。」
モリアーティ「君は凡人、天使の側に居る人間だ。」
「天使の側かもしれないが、一瞬でも思うな、僕が天使の一人だなんて・・・」と、友人を救うための決意と覚悟を表現したシャーロック。
超・個性的な二人の哲学的な問答が、ジワジワと迫力を生みます。
クリクリ眼(まなこ)に何かが浮かんだ感じのモリアーティが「分かった。君は特別。そう、君は僕。君は僕。 ありがとう、シャーロック・ホームズ。」と言って握手を求めてきます。
ためらいがちに手を握り返すシャーロック。
モリアーティ「僕が生きていれば三人が助かる道が残る。まあ、がんばれよ」
そういって口を大きく開けたかと思うと、あっという間に取り出した拳銃を咥えて引き金を引きました。
「「「 バ〜〜ン!!!」」」
倒れたモリアーティから大量の血が流れて屋上を染めます。
これで狙撃中止命令を出す手立てが無くなりました。
唯一の可能性は、シャーロックが屋上から飛び降り自殺して、狙撃手が発砲を中止することだけ・・・。
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ジョンが病院に近くにやってきたとき、シャーロックが屋上から身を翻し、路上にドスン。
地べたには血を流した死体。
なすすべも無いジョン。
後日、シャーロックの墓を訪れたジョン。
木陰から彼を見つめているのはシャーロック・・・。
というわけで、『ホームズ最後の事件』みたいに死んだことになって、第2シーズンも”クリフハンガー方式”で第3シーズンにオチを持ち越し・・・。
飛び降りたのが病院の屋上であったことと、聖バーソロミュー病院の法医学者・モリーとの会話が、自殺の謎を解くキモでしょうかね・・・。
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前回の『バスカヴィルの犬』では好敵手がおらず、テンポも出なかったのですが、やはり好敵手モリアーティが出てくると物語が締まりますね。
シャープです。
現代的ツールと、古典的なコナン・ドイルの物語をフュージョンさせた英国ドラマは小粋で最高でした。
五輪・女子バレーは英国代表に勝ちましたが、ドラマ作りでは英国に完敗ですね。
約40年前にホームズ・シリーズを読んだ頃には、まさか”21世紀版ドラマ”を見るなんて想像だにしていなかったので、「50年ちょい生きてると、得することもあるなぁ」などと小さな幸せを感じました。
『シリーズ3』が楽しみです。
◇◆◇ 『SHERLOCK』第3シーズン感想 ◇◆◇
Season3・第1話「空(から)の霊柩車」感想>>
Season3・第1話「空(から)の霊柩車」感想>>
◇◆◇ 『SHERLOCK』第1シーズン感想 ◇◆◇
Season1・第1話「ピンク色の研究」感想>>
Season1・第2話「死を呼ぶ暗号」感想>>
Season1・第3話「大いなるゲーム」感想>>
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