NHK『火の魚』尾野真千子&原田芳雄さんの奇跡の傑作ドラマ

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    NHK『火の魚』2012年3月3日 BSプレミアム

    こりゃ、凄い。
    良いドラマでした!!

    2009年7月24日に中国地方向けに放送されてから、高い評価を受けていたらしいのですが、今まで気づくことなく見逃していた『火の魚』
    尾野真千子が『カーネーション』の糸子役を卒業し、故・原田芳雄氏が『日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞』を受賞したタイミングでNHKが再放送してくれたので、視聴の機会を得ました。
    −◆−

    基本的に、原田芳雄さんと尾野真千子の二人芝居のようなドラマ。

    島で暮らす頑固な老作家・村田省三 (原田芳雄)のもとに、担当編集者・伊藤に代わって東京から若い女性編集者・折見とち子 (尾野真千子)が原稿のやり取りに通ってくる・・・。

    37歳で直木賞に輝いた村田省三 (原田芳雄)は、プライドばかりが強くて意固地な爺さんで、愛想のない28歳の女性編集者が自分の原稿を取りに来たことを不満に思ってた・・・。

    生き生きした岸和田言葉ではなく、ビジネスライクな完璧敬語で直木賞作家と臆することなく対峙する知的な”折見とち子”を演じる尾野真千子・・・。

    最初は、糸子ではないオノマチさんに違和感を感じたものの、次第に”折見”の個性に吸い込まれていきました・・・。
    −◆−

    村田(原田芳雄)は、折見(尾野真千子)が島の砂浜に子供のために一人で巨大な龍を描いたことで、彼女に対する興味が生まれます。

    文学論でも、折見は村田にズバリときついことを・・・。

    折見に興味以上の感情が芽生えたらしき村田(原田芳雄)は、わざと彼女に無理難題を言いつけ始めます。
    老人でありながら、子供のような意地悪心・・・。


    まずは、かつて”折見”が手がけていたという『人形劇=影絵紙芝居』を島の子供に披露するよう指示。

    ”折見”は見事な『影絵紙芝居』を披露し、島の人からは再演希望が・・・。

    これが、綺麗な紙芝居で、めっちゃ凄いの!!
    ドラマのクオリティを高めます。
    −◆−

    小説の装丁について話をする二人。
    村田(原田芳雄)は飼っている金魚の「魚拓」を表紙にしたいと折見(尾野真千子)に無理な提案。
    魚拓をとるには、金魚を殺さなければならない・・・。

    拒否するかと思いきや、しばらく逡巡したのちに”折見”が承諾。


    父と一緒に魚拓を取った経験をもつ”折見”は、覚悟を決めて金魚鉢から手ですくい上げ、刃物で”りゅうきん”を刺して殺します。

    無言で泣きながら・・・。

    生き物の命を奪うこの場面が、恐ろしく印象的・・・。


    さらには、金魚を殺して魚拓をとり終わった直後に、村田が島の食堂で「鯛の刺身」を”折見”に御馳走・・・。
    黙々と、刺身を食べる”折見”が凄い!!
    このドラマの文学性を象徴するような場面です。


    そして、村田(原田芳雄)は大きな後悔を味わう羽目に・・・。
    −◆−

    小説の表紙案を持ってくるはずの”折見”が、いつまでたっても来ません。
    村田(原田芳雄)は、居てもたってもいられなくなって出版社に電話。

    すると前の担当者・伊藤(岩松了)が、”折見”が入院していることを打ち明けました。

    癌が再発・・・。

    村田(原田芳雄)は、駆り立てられるように状況して、2万円分の真紅の薔薇の花束を抱えて病院に向かいます。
    −◆−

    ”折見”は病室には不在でした。
    上階から院内を見回した村田は、パジャマ姿で点滴しながら病院のピロティにたたずむ”折見”を見つけ、彼女も村田に気付き、白い顔で一瞥・・・。

    村田が階段を駆け下りて”折見”がいたピロティに行くと、すでに彼女の姿はありません・・・。
    −◆−

    2時間後。
    病院の外の公園みたいなスペースに座っていた村田に「ごぶさたしております」と”折見”が挨拶。

    ”折見”は、頭を隠すための帽子はかぶったままですが、点滴は外し黒いスーツに着替えてやってきました。
    着替えたのは、編集者としての矜持か、女性としてのたしなみか・・・。


    折見「先生がそんな大きな花束を持ってかれこれ2時間も座っておられるせいで、病院中の女が色めき立っております。」

    セリフがいいわぁ!!

    折見「無断で担当を降りましたこと、申し訳ありませんでした。」
    癌のせいにせず、詫びる”折見”凄い。

    折見は、さらに「装丁含め、単行本の出版までは、弊社伊藤の方が、つつがなく進めてまいると存じます。」
    (重箱の隅をつつきたくないけど、『弊社伊藤のが』ではなく『弊社伊藤が』と言ってほしかったなぁ。今時言葉の『のが』は、完璧女子・折見に似合わない。)
    −◆−

    ようやく村田(原田芳雄)が口を開き「折見・・・悪かったな」

    折見「何のことでしょう?」

    村田「すべてだ。」「気の進まない人形劇をやらせ、年寄りの愚痴を聞かせ、金魚を殺させ、編集者としておれという作家にかかわらせたこと自体を悔やんでいる。俺は、お前の病気のことは本当によく知ってる。ストレスだなぁ。ストレスが一番よくないんだよ。」

    折見がうつむきながらニッコリ微笑んで「先生。私を侮られては困ります。むしろ逆でございます。2年前に手術をしてから私はこの世で一番孤独だと思っておりました。しかし先生は、私以上に寂しい方であられました。『他人の不幸は蜜の味』と申しますが、先生の無残な孤独ぶりだけが私の心の慰めでした。」

    こんなに深いセリフを、そこいらのドラマでは耳にできない。
    −◆−

    折見「先生。死を意識されたことはおありですか?」

    村田(原田芳雄)がうなづきます。

    折見「そのとき、人間は果てしなく孤独です。でも、その孤独こそが、先生と私を強く繋げてくれている気がしました。」

    村田は、折見の言葉にこたえることはせず、ぶっきらぼうに薔薇の花束を示して「これ買ってきた。要るか?」

    「有難く頂戴します。」
    涙をにじませながらも小さく笑顔を見せて花束を手にした折見。

    折見は左手で涙をぬぐいながら「先生。私、今、モテている気分でございます。」

    村田は、視線を合わせられずに「あながち、気のせいでもないぞ。」と呟き返しました。

    二人の『モテている→気のせいでもない』というやり取りが、最高に素敵です!!
    これは、凄いですよ!!
    −◆−

    間をおかず村田は「行く」と言って立ち上がりました。
    不器用な少年みたいな老作家です。

    はにかみながら、涙が浮かんだ目で村田に視線を合わせる折見。
    なんて素敵な表情!
    尾野真千子さん、やっぱり演技が巧い。

    少し口を開きかけた折見に、村田が「何も言うな。行け。」

    頭を下げて、その場を立ち去る折見 (尾野真千子)・・・。

    立ち尽くす村田(原田芳雄)の背中越しに夕日。

    立ち去る折見の背中に向かって、何か言いたげに少し口を開くけど、言葉が出てこない村田。

    病院の玄関近くで振り返り、村田に向かって深々と頭を下げた折見。

    病院の自動ドアが開いて、折見の姿が見えなくなるまで見送った村田・・・。


    いや〜〜、良いシーンでした。
    −◆−

    島に帰る船の上。

    ひたすら航跡を見つめる村田が心の中で「折見。お前が持って生まれ、そしてお前なりに守り通すであろうその命の長さに、おれが何の文句をつけられよう。心配するな。俺とて後に続くのに、そんなに時間はかからんさ。だがそれでも、もし、かなうなら、今生、どこかでまた会おう・・・な。」

    胃を患ってからは禁煙して節制していた村田が、船上大声で「たばこ、吸いてぇ〜〜〜〜!!」と、空に向かい叫びます。

    死に向き合って、喫煙という人間の営みへの欲が戻った村田・・・。
    《死と生》
    −◆−

    ウルウル〜〜〜参りました。ギブアップ。
    原田芳雄さんと尾野真千子の芝居が凄い。
    渡辺あやさんの脚本も凄い!!


    劇中、太陽の周りを丸い虹が囲む映像があったんですが、これは実際に撮影中に原田芳雄さんが見つけて、カメラさんが撮影したそうで、一種の『奇跡』ですよね。

    このドラマは、国内では『放送文化基金賞優秀賞』、同賞で尾野真千子さんが『演技賞』、『文化庁芸術祭大賞』を受賞。
    海外ではモンテカルロ・テレビ祭の『ゴールドニンフ賞』、第62回『イタリア賞』、シカゴ国際映画祭関連のコンクールで『ヒューゴ・テレビ賞』を受賞。

    そして、尾野真千子さんが『カーネーション』で一躍注目を浴び、原田芳雄さんが『日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞』を受賞し、ますますドラマの付加価値が高まりました。


    内容の凄さや、丸い虹や、尾野真千子さん原田芳雄さんのことを含めて、奇跡のドラマです。

    本を一冊読み終えたような満足感です。




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